続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「それ、もう確定じゃない?」
朝の更衣室で、カオルがすっぱりと言った。
何がとは言わなかったが、それは聞くまでもない。
「ていうか。なんで拒否なりアドレス変更なりしてないの? そんなんだったらおさまるわけないでしょ」
「拒否ならしたよ。火曜日に家に帰ってから。そしたら、その夜はメール来なかった。……でも……次の日にはアドレス変えて送ってきたの。しかも、携帯とパソコンとから送ってきてるみたいで、何回か間違えて開いちゃった」
そのメールに書いてあった内容を思い出して、奈津美は肩を震わせる。
奈津美の行動を逐一報告する内容が主であったが、それに加えて『今何してるの?』『一人じゃ寂しくない?』だとか、家に居る奈津美のことを窺うもの『僕がいるからね』などという、自己主張をしてくる内容も増えた。
だんだんと、ストーカーの存在の色が濃くなってきた。これはもう、認めざるを得ない状況になってきた。
「でも、アドレス変更もしてないみたいだけど、何でしないの?」
カオルが言うとおり、奈津美はまだ自分のアドレスの変更をしていなかった。
しかし、それはしなかったわけではない。できなかったのだ。
「それは私も、しようと思ったよ。流石に気持ち悪かったし……それで、水曜の夜に、変えようかなって思って、変えようとしたの。そしたら、電話がかかってきて……非通知だったけど、ずっと鳴りっぱなしだったから、出たの。そしたらすぐに切れて……最初は何も思わなかったけど、それが何回も続くから……」
「もしかして、携帯の番号も知られてるの?」
「そうかもしれない」
奈津美が頷くと、カオルは息を呑んだ。
「……そっか。確かに、アドレス変えたって変わらないかもね」
メールアドレスは簡単に変えられても、携帯の番号までは簡単には変えられない。
「……そろそろ行こう。時間だし……」
奈津美はため息をつき、ロッカーの鍵を閉めた。
「……でもやっぱり、アドレス変えたほうがいいのかなって思うことはあるんだけど……でも、アドレス変えたら、それをまた周りに知らせないといけないでしょ? それが不安なの」