続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~

「それ、もう確定じゃない?」


 朝の更衣室で、カオルがすっぱりと言った。


 何がとは言わなかったが、それは聞くまでもない。


「ていうか。なんで拒否なりアドレス変更なりしてないの? そんなんだったらおさまるわけないでしょ」


「拒否ならしたよ。火曜日に家に帰ってから。そしたら、その夜はメール来なかった。……でも……次の日にはアドレス変えて送ってきたの。しかも、携帯とパソコンとから送ってきてるみたいで、何回か間違えて開いちゃった」


 そのメールに書いてあった内容を思い出して、奈津美は肩を震わせる。


 奈津美の行動を逐一報告する内容が主であったが、それに加えて『今何してるの?』『一人じゃ寂しくない?』だとか、家に居る奈津美のことを窺うもの『僕がいるからね』などという、自己主張をしてくる内容も増えた。


 だんだんと、ストーカーの存在の色が濃くなってきた。これはもう、認めざるを得ない状況になってきた。


「でも、アドレス変更もしてないみたいだけど、何でしないの?」


 カオルが言うとおり、奈津美はまだ自分のアドレスの変更をしていなかった。


 しかし、それはしなかったわけではない。できなかったのだ。


「それは私も、しようと思ったよ。流石に気持ち悪かったし……それで、水曜の夜に、変えようかなって思って、変えようとしたの。そしたら、電話がかかってきて……非通知だったけど、ずっと鳴りっぱなしだったから、出たの。そしたらすぐに切れて……最初は何も思わなかったけど、それが何回も続くから……」


「もしかして、携帯の番号も知られてるの?」


「そうかもしれない」

 奈津美が頷くと、カオルは息を呑んだ。


「……そっか。確かに、アドレス変えたって変わらないかもね」


 メールアドレスは簡単に変えられても、携帯の番号までは簡単には変えられない。


「……そろそろ行こう。時間だし……」


 奈津美はため息をつき、ロッカーの鍵を閉めた。


「……でもやっぱり、アドレス変えたほうがいいのかなって思うことはあるんだけど……でも、アドレス変えたら、それをまた周りに知らせないといけないでしょ? それが不安なの」

< 294 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop