続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~

 カオルの言う、一目で男の形跡と分かるものは、特に無かったと思う。

 敢えていうのなら、あの前夜の二人の交わりの処理に使われたゴミはあるが、それを捨てに行こうと思ったら既にゴミは無くなっていたので、本当にないはずだ。


「なるほどね。それで尚更なのかもね、ストーカーが奈津美を狙ってるのも。多分、彼氏なんていないって思われてるんじゃない?」


「……じゃあ、旬のことが分かったら、やめてくれるかな」

 ほんの少し、期待を持って奈津美は言った。


「さあ。どうだろうね。元から恋人が居るって分かっててもストーカーする奴だっているだろうし」


「……だよね」


 現時点で特異な行為をしてくる人間だ。常識が通じるとは思わない。


 しかし、もしストーカーに旬の存在がバレたら、一つ不安なことがある。


 以前、テレビでストーカー被害についてまとめたものを見たことがあった。


 さまざまなケースについての被害を再現VTRを交えた映像で報告されていた。

 その中の一つには、こんなものもあった。


 ストーカー被害に遭った女性が、ストーカーを諦めさせるために、男性の友達に、恋人役としてのカモフラージュを頼んだ。

 しかし、それを見たストーカーが、男性のことを恋人だと思い込んだまではよかったものの、逆恨みをして、その男性を刺したというのだ。


 これが実際に起こらないことだとは言い切れない。もしも起きてしまった場合、被害者になるのは旬だ。


 それだけは怖かった。


 自分のせいで、旬にまで危険な目に遭わせたくない。


「ていうか、奈津美は旬君にストーカーのこと話したの?」

 嫌なタイミングでカオルが聞いてきた。


 奈津美は何も言えずに黙ってしまう。これでもう答えたようなものだ。


「奈津美。いいの? 話さなくて。……まあ、この話の流れで言うのも悪いけど」


「ううん……なんか、旬には言い辛くて……」


 そのことを考え出すと、言えなかった。


 自分の我慢ですむのなら、旬に余計な心配も、迷惑もかけたくない。

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