続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「奈津美の気持ちも分からなくはないけどね。あたしだって、もし同じ境遇なら言えるか分からないから……」
不思議なことに、言おうとしても、言えないことがある。
心の中では、大したことないだろうと、言えるだろうと思ったことでも、いざ口にだそうとすると、ためらってしまう。
特に、こういうことを異性には、たとえ恋人でも言うことができない。
「とにかく、早くなんとかした方がいいのには変わりないし、対策とかはした方がいいわね。携帯とかも、替えたほうがいいんじゃない?」
カオルはそう言って、色々提案してくれる。
「うん……ごめんね、カオル。あたしのことなのに、色々言ってくれて……」
旬には全く言えないことなのに、カオルに対してはもう多すぎるくらい心配も迷惑もかけている。
それに頼りっぱなしの自分が情けない。
「いいよ。しょうがないって。こんなこと、普通は人に言いづらいことなんだし。当事者なんだから、一番困惑してるんでしょ」
「そうかな……」
「そうよ。だから奈津美は自分がこれ以上の被害に遭わないことだけ考えてたらいいのよ」
「カオル……」
奈津美は、カオルの男前とも思える優しさに、泣きそうになった。
この場ではなくわけにはいかないので、ぐっと堪える。
「っていっても、あたしも、何も出来ないから……ごめんね」
「ううん! カオルがいなかったら……あたし、多分、本当にどうしたらいいか分からなかっただろうから……だから、ありがとう。カオル」
丁度二人の部署の入り口近くまできて、カオルが立ち止まった。
それを見て、奈津美も立ち止まった。
カオルは奈津美の正面に向き直ると、ポンポンと頭に手を置いた。
「よしよし。素直でよろしい。旬君にもそれくらい素直だったらいいのにね」
「なあ……!?」
子供扱いしたような仕草と、少し皮肉の混じったカオルの発言に、奈津美は大口を開けた。