続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「……ナツ、鍵出せる?」
部屋の前でようやく旬がそう言った。
「うん……」
奈津美は頷いて鞄の中に手を入れた。
この時気付いたけれど、手が震えていて、鍵を探すだけで時間がかかってしまった。
鍵を取り出すと旬がそれを手に取ってドアを開けてくれた。
玄関に入ってドアが閉まったと同時に、急に膝の力が抜けて靴を脱ぐ前にそこにへたり込んでしまった。
「ナツ?」
先に部屋へ上がった旬が奈津美を振り返った。
「ナツ、大丈夫?」
旬は奈津美を抱きかかえ、奈津美を玄関の段差に座らせてくれた。
その時に切れたパンプスのストラップが見えて、それと同時に、緊張の糸も切れた。
奈津美の目からはボロボロと涙が溢れ出した。
「こ……こわか……怖かった」
震える声で、やっとそう言葉にした。
言葉にすると、今になってその感情が蘇った。涙と一緒に色々なものが溢れてくるようだった。
「怖かった……」
言葉にすればするほど涙が止まらなくなる。
しかし、今まで言えなかった分、口に出さずにはいられなかった。
「ナツ……」
旬が奈津美の横にしゃがんだ。
「何で俺に言ってくれなかったの?」
奈津美は旬の方を見た。旬は真剣な目で真っ直ぐ奈津美を見ていた。
「ストーカーのこと。何で俺に何も言わなかったの?」
再び旬は言った。今度はさっきより語調が強い。
こんな旬は初めてで、奈津美は戸惑った。質問自体にも、答えづらかった。
「ナツのことだから、俺に心配かけたくないとか思ったんだろ」
奈津美が答える前に旬が言った。
その通りで、奈津美は気まずくなって俯いた。