続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「涼介君?」
奈津美は首を傾げた。
「……俺……実は、高所恐怖症なんです。それも極度の」
下を向いたまま、涼介は呟いた。
「えっ……そうなの?」
奈津美は目を丸くした。
「でも……さっきのは乗ってたじゃない」
極度の高所恐怖症というのなら、さっきのだってかなり激しかった。あれも怖かったのではないだろうか。
「さっきのは……一応室内だし、暗いから大丈夫だと思って……」
暗いからと言って変わるものなんだろうか。
……あんまり変わらない気もするが……
「かなりギリギリ……ていうか、限界でしたけど……」
やっぱり……
そういえば、『コメット・トラックス』をおりた後、涼介はほとんど喋っていない。
落ち着いているように見えたから、平気なのかと思っていたが、それはただ恐怖のあまり口が動かなかったということだろうか。
「それならどうして今日ここに来たの?」
これは疑問だ。
遊園地なんて、高所恐怖症の人間が乗れるものなんてほとんどないだろう。
ましてや、ここは絶叫系を売りにしてるところだ。それが分かってるはずなのに、何てわざわざ来たのか……
「加奈が、来たいって言ってたんで……だから……」
涼介は目線を下にしたまま答えた。
「え……加奈ちゃんは知らないの? 高所恐怖症ってこと……」
「はい。加奈と出かける時にこういう類のところなんてきたことなかったし、わざわざ言ったことなんてなかったんで……それに、もし知ってたら俺に行きたいなんて言わなかったと思います」
「加奈ちゃんには本当のこと言わなかったの?」
奈津美が尋ねると、涼介は頷く。
「情けないじゃないですか。男のくせに、高いとこが苦手なんて……」
そこまで言い、涼介の耳が赤くなった。
「それに……加奈がこういうの好きで、行きたいって言ったから……」