続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
旬は、奈津美を会社まで送ってくれた。
奈津美はいいと断ったけれど、旬がそうしないと気が済まないようだったので、送ってもらった。
「……ここまででいいよ」
会社のほぼ正面まで来て、奈津美は立ち止まって言った。
「送ってくれてありがとう」
笑顔を作って旬を見上げたつもりだったけれど、顔が強張って、上手く笑えていないのが奈津美は自分でも分かった。
「……うん。ナツ、本当に大丈夫?」
不安そうに言いながら、旬は今日何度目かの心配の言葉を口にする。
「大丈夫だってば。それより旬も早く帰って少しでも休んで? 家だって心配だし」
「いや、俺のことはいいから……もし何かあったらすぐ連絡しろよ? 飛んでくるから」
真っ直ぐに真剣な目をして、力強く旬は言った。
「旬……ありがとう」
旬のその言葉だけで、もう十分心強かった。
不安はあるけれど、その不安を優しく包んでくれるような気がした。
「おっはよー」
二人の間に、聞き覚えのある声が聞こえた。
二人が揃って声の方を見ると、カオルが手を振りながら二人に歩み寄ってきた。
「カオル……おはよ」
「おはようございます」
気まずい雰囲気を漂わせながら、二人はカオルに挨拶をした。
「なーに? 平日の朝っぱらから、おアツいわねー」
カオルはただのいちゃつきだと思ったらしく、にんまりと笑いながら冷やかす。
「別に……そんなんじゃ……」
いつも通りを装ってみようとしたが、やはりいつもより力のない声になってしまう。
「……んじゃ、俺行くから。カオルさん、ナツのこと、よろしくお願いします」
旬はカオルに軽く頭を下げた。
「え……あ、うん。任せといて……?」
カオルは戸惑ったような顔色を示した。
流石に、この雰囲気から何かを悟ったようだった。