続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
奈津美が何でもない日に旬に酒を勧めるなんて珍しい。
しかし旬は、その奈津美の珍しい言動に何かを感じて、素直に頷いた。
「ありがとう」
笑顔を旬に向けて、奈津美はグラスを用意しようと食器棚に向かった。
本当は、あまり飲みたいという気分ではなかった。
だけど、アルコールの力を借りたかった。そうしないと、疲れてしまいそうだった。
酒で失敗したことのある奈津美だから、こういうことはしないほうがいいとは分かっていたけれど、今日だけは自分から飲もうという気分にさせられた。
ローテーブルにグラスを二つ置き、ビールを均等になるように注ぐ。
旬はそれを見ながら先に食事を勧めていた。
「……はい、旬」
奈津美は片方のグラスを旬の前に置き、もう一つを自分の方に引き寄せた。
「うん。あ、ごめん。先食ってるけど」
「ううん。あたしが頼んだんだから、いいよ」
「ん……じゃあ、とりあえず」
旬は自分の分のグラスを持ち上げた。
「うん……」
奈津美もグラスを持ち上げて、グラスを当て、小さく、乾杯、と言った。
そして、旬は食事を続け、奈津美は旬が持ってきてくれた唐揚げをつまみにちびちびとビールを飲んだ。
何故か、お互いが喋りだせずに、静かだった。
「……なんかさ。店長の唐揚げってちょっと独特だよな」
旬が唐揚げを箸で摘んで旬は言った。
「そう?」
奈津美も唐揚げを摘んでみた。
「何か独特じゃない? 俺んちと違う。それに塩とかついてないし……でもなんかピリッとしてるっていうか……なんだろ、これ」
もぐもぐと口を動かしながら、旬は首を傾げる。