続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
旬の死角に入ってすぐ、奈津美は小さくため息をついた。
ダメだ。旬と一緒なのに、いつも通りに振る舞えない。これだと、旬がおかしいと思うのも無理もないじゃないか。
しかし、いつも通りに振る舞わなくてはと思う反面、本当にそれでいいのかとも思う。
いつも通りに、今までと同じように、これからも……
奈津美は旬のご飯をよそって、すぐにリビングへ戻る。
「あ、ありがと、ナツ」
旬が笑顔で奈津美を見る。
「うん……」
つられて笑いながら、奈津美は旬に茶碗を渡し、自分の場所に座る。
旬は、夢中でパクパクとおかずを摘んでいる。
やっぱり、話すべきなのだろうか。奈津美は旬を見ながら悩む。
「……何?」
旬と目が合った。
「えっ……」
奈津美はピシッと固まってしまった。
「もー。俺のことが好きなのはわかってるから、ご飯中はちゃんとご飯食べようよぉ」
デレデレと鼻の下を伸ばしながら旬は言った。
「ちょっ……違うわよ!」
前にも似たようなやり取りをした気がする。
あの時も、奈津美が言いたいことを黙っていた時だったような……
旬には、無意識のうちに伝わっているのかもしれない。
そうだ。これをきっかけに旬とちゃんと話そう。
「ねえ、旬」
「ん?」
旬は里芋の煮っ転がしを箸で摘んだまま止まる。
が、上手く摘めていなかったらしく、コロンとテーブルに転がった。
「あ」
旬はすぐに箸でおいかけ、箸で刺そうとする。が、それもにげられテーブルを滑る。
「あれ?」
旬はまた同じことを繰り返すが、里芋はつかまらずに箸から逃げる。
「もー」
旬は仕方なくといったように手で摘んで口に運んだ。
「……旬。行儀悪い」
見かねた奈津美は注意をする。
「へへっ」
しかし、いつものことなので旬はヘラヘラと笑っている。
奈津美はため息をつきながら、口元を緩めた。