続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~

 旬の死角に入ってすぐ、奈津美は小さくため息をついた。


 ダメだ。旬と一緒なのに、いつも通りに振る舞えない。これだと、旬がおかしいと思うのも無理もないじゃないか。


 しかし、いつも通りに振る舞わなくてはと思う反面、本当にそれでいいのかとも思う。


 いつも通りに、今までと同じように、これからも……


 奈津美は旬のご飯をよそって、すぐにリビングへ戻る。



「あ、ありがと、ナツ」

 旬が笑顔で奈津美を見る。


「うん……」

 つられて笑いながら、奈津美は旬に茶碗を渡し、自分の場所に座る。


 旬は、夢中でパクパクとおかずを摘んでいる。


 やっぱり、話すべきなのだろうか。奈津美は旬を見ながら悩む。


「……何?」


 旬と目が合った。


「えっ……」

 奈津美はピシッと固まってしまった。


「もー。俺のことが好きなのはわかってるから、ご飯中はちゃんとご飯食べようよぉ」

 デレデレと鼻の下を伸ばしながら旬は言った。


「ちょっ……違うわよ!」


 前にも似たようなやり取りをした気がする。


 あの時も、奈津美が言いたいことを黙っていた時だったような……


 旬には、無意識のうちに伝わっているのかもしれない。


 そうだ。これをきっかけに旬とちゃんと話そう。


「ねえ、旬」


「ん?」

 旬は里芋の煮っ転がしを箸で摘んだまま止まる。

 が、上手く摘めていなかったらしく、コロンとテーブルに転がった。


「あ」

 旬はすぐに箸でおいかけ、箸で刺そうとする。が、それもにげられテーブルを滑る。


「あれ?」

 旬はまた同じことを繰り返すが、里芋はつかまらずに箸から逃げる。


「もー」

 旬は仕方なくといったように手で摘んで口に運んだ。


「……旬。行儀悪い」

 見かねた奈津美は注意をする。


「へへっ」

 しかし、いつものことなので旬はヘラヘラと笑っている。


 奈津美はため息をつきながら、口元を緩めた。

< 368 / 382 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop