続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「……その里芋、おいしい?」
苦し紛れに出た言葉が、それだった。
「へ? うん。美味いよ? いつもと一緒」
旬にとっても予想外だったらしく、首をかしげながら答えていた。
「そう……」
「でも何で?」
旬が聞くのは尤もだが、奈津美は今度こそ本当に困った。
「えっと……あの、ね? ……その里芋の煮っ転がし、五日前に作ったやつなの」
「えっ!?」
旬は眉間に皺を寄せて租借する口を止めた。
「その……いっぱい作りすぎちゃって……冷蔵庫に入れっぱなしになってたの忘れてたの」
「ええー……」
「あ、でもちゃんと温め直してるから! 味に問題なかったら大丈夫よ」
我ながらひどい誤魔化し方だと奈津美は自分でも思っていた。
確かに、里芋を冷蔵庫にいれたまま忘れていたのはそうなのだが、鍋でちゃんと火にかけて温め直したし、味見もして大丈夫だと思ったから出したのだ。
「うーん……まあ、味は美味しいけど……あ、まさかそれで全然食ってなかったの?」
そういうわけではないが、これ以上何かを言うのも苦しかったので曖昧に笑った。
多分、旬はそうだと思うだろう。
「ナツがそういうことするのって珍しいな」
そんなことを言いながらも、旬は里芋に箸を伸ばしていた。
……ごめん。わりとしょっちゅうやってたの。
心の中で言いながら、奈津美は何も言わずに笑顔を作っていた。
結局、本題に入ることはできなかった。