続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~

「奈津美」

 カオルに呼ばれて、奈津美は我に返る。


「え? 何?」


「もう乗ってるから」

 カオルに目で奈津美の手元を示され、奈津美は自分の手元を見る。


 トレイの上には、Aランチの一式が全て乗っていた。奈津美が止まっているせいで、受け取り口の列が滞っていた。


「あっ。ごめんなさい」

 恐縮しながら、奈津美は慌てて列を外れた。

 後から続いたカオルと空いた席を見つけ、向かい合って座った。


「……でもさぁ。ちょっと羨ましいとは思うな」

 箸を手に取りながら、カオルが言った。

「え?」

「自分の夢を投げ出してまで、自分のことを想ってくれてるのって。なかなかないと思うよ。そんなことが出来る人も、そんな人に想われることも」

 カオルは、いただきます、と言って、ランチに手をつけた。

 確かに、そうだと思う。

 普通、そこまでできるほど相手のことを想うことなんてない。そして、そんな人が少ないから、そういう相手にめぐり会うことなんて簡単ではない。

 だからこそ、奈津美には分かるのだ。旬がどれぐらい自分を想ってくれているのか。今まで出逢った誰よりも、自分を想ってくれているのか。


「……まあ、これもあくまで理想論だけどね。現実を見ると、そうそういなくて当たり前っていうか」
 カオルがふうっとため息つきながら言った。


「……ねえ、カオル」


「ん?」


「カオルに言ったことあったっけ? あたし、元々ここの会社が第一希望じゃなかったって話」

 話が話なので、声を少し押さえて奈津美は言った。


「ああ、うん。聞いたよ。英語が使えるようなとこって言ってたんだっけ」


「うん……」

 小さく頷くと、奈津美はしばし、目を閉じた。そして目を開くと同時に、言葉を紡ぐ。

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