続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「あたしね、昔から、英語が得意だったから、英語関係の仕事したいなって思ってたの。これっていう、具体的な職業はなかったけど……別に通訳とか、翻訳家だとか、そういう英語を主に使うような仕事じゃなくても、ホテルだとか、こういう会社でも、受付だとか、英語が役にたつような仕事がしたかったの」


 結局、その希望は叶わず、今この会社で働いている。……と、言ってしまったらこの会社に申し訳ないが。


「あたし、昔から中途半端だったの。具体的な夢とか目標があったわけじゃなくて、ただ、英語が得意だったから、英語関係の仕事に就きたいって思っただけで……進学だって、推薦で安全牌のところ選んじゃって。それも短大だったから、就職の時、四年制の学校に行ってた人に比べたら不利だったし……」

 奈津美は、旬の夢を聞いて、初めてそのことに気がついた。


「旬は、あたしなんかとは違うの。ちゃんと、具体的な夢があって、それに向かってちゃんと進もうとしてた。……でも、あたしがそれを止めた。あたしが旬の夢を邪魔したの」

 旬は、奈津美よりもしっかりと目標を持っていたのに。奈津美なんかよりも、ちゃんとした夢があったのに……

 それを奪ったのは、奈津美であるということに変わりない。


「奈津美の気持ちは、やっぱり分からなくもないけど……それでも、決めたのは旬君でしょ? 奈津美は何も知らなかったわけなんだし……仕方ないじゃない」

 さっきと同じように、奈津美に非はないということをカオルは言ってくれる。


「……何も知らなかったから……だからこそなの」

 呟くように奈津美は言った。


「え?」


「あたし……旬のこと、何もできなくて、何もない奴なんだって、勝手に思ってた。でも、全然そんなことなかった」


 フリーターという不安定な立場で、一人暮らしでも実際、奈津美がいないと自活は無理なのではないかというくらいひどい。

 だから、勝手に何も出来ないと決めつけていた。


 でも、そんなことはなかった。

 むしろ、芯の部分は奈津美よりもしっかりとしていたのではないだろうか。

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