続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
インターホンを押しても、何の反応もなかった。
寝ていて気付いていないだけだろうか。気付いていても動けないぐらいひどいのだろうか……
奈津美は旬の部屋の合鍵でドアを開け、中に入った。
「旬ー?」
玄関で靴を脱ぎながら呼びかけてみるが、やはり何の反応もない。それどころか、部屋はまだカーテンを開けていないようで薄暗く、静まり返っていた。
「旬? 居ないの?」
奈津美は部屋の中に入って足元に注意しながら奥に進んだ。
あれ以来(バレンタインの一連。再び前作・前々作参照)、旬は部屋を前ほど汚さないよう努力するようになった。
……とは言っても、最悪、足の踏み場もないという状態は免れているだけで、一週間前に掃除をしたばかりなのにもうゴミが散らかっている。足元に注意しなければ何を踏むか分からない。
奈津美は旬のベッドに近付いたところで、顔を上げてそこに居るであろう旬を見た。
……が、ベッドの上は、枕があるだけで、旬はおろか、掛け布団さえなかった。
どういうことか分からず、奈津美は首を傾げた。
旬の姿がないなんて、そんなことあるはずはない。奈津美は更にベッドに近寄った。
「ひゃっ……!?」
踏み出した足元に変な感触がして、奈津美は飛びのいた。
何かを踏んだ。いつものように、散らかったゴミだとか、そんな感触ではなかった。
踏みつけた瞬間『グリッ』としていた。
一体何なんだ……
奈津美は薄暗い中で目を凝らして足元を見た。
グレイの布地に包まれた棒状のものが落ちている。太さはそこそこのものだ。
それだけでは何か分からず、その先をたどってみる。
「ひっ……!」
思わず小さく奇声をあげた。
先にあったのは、人の手だった。その手は、携帯が握り締められていた。
しかもそれは旬の携帯だった。
まさか……!