続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~

「……マジで?」

 涼介はポカンと口を開けて言った。


「何で嘘でこんなこと言わないといけないのよ! 当たり前でしょ!」


「……加奈は……旬のことが好きなんじゃないのか?」


「え……?」

 驚きで加奈の涙がピタリと止まる。


「何で旬……」


「好きだっただろ? 昔……」


「なっ……何言ってんの!?」

 加奈は目を丸くする。


「確かに……昔は好きだったけど……でも、二年半も前のことでしょ! そんなに未練がましくないもん! ……もしかして、今日、旬と一緒だったのって……それもあったから……?」

 ふと気付いて、聞く。すると、涼介は、声に小さく頷いた。


「ああ……そうだよ」


「……バカァ!!」

 加奈は再び叫んだ。


「何でそんなことするの!? あたしはもう旬のこと、友達としてしか好きじゃないもん! もしまだふっ切れてなかったら……こんなに長い間涼介と付き合えないよ!」

 止まっていた涙がまた溢れ出した。


「大体! 涼介が言ったんでしょ? 『旬じゃなくて、俺でよかったって思われるようにするから』って……あたしにとっては、もうとっくにそうなってたよ! 涼介は、旬の代わりなんかじゃないんだよ!」


 加奈にとっての涼介は、誰かが代わりを努められるような存在じゃない。

 涼介は涼介しかいない。

 誰よりも大事な人になっていた。


「うぅ〜……涼介のバカぁ……」

 加奈は下を向いて、ぽろぽろと涙を溢した。


「……ごめん」

 その声と共に、加奈の体は何か温かいものに包まれた。


 この感触は知っている。涼介の、腕の中だった。


 涼介が、立ち上がって、加奈のことを抱き締めていたのだ。


 高所恐怖症の涼介には、こんなところで立ち上がるなんて、怖いはずだ。

 それなのに、そんなことは忘れてしまったように、涼介は加奈をしっかりと包んでいた。


「ごめん……泣かせた。泣かせないって、約束したのに……」

 加奈の頭の上で、そんな涼介の声がした。


 涼介は覚えてた……あの時のこと……


 加奈はそれだけで胸を締め付けられていた。


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