続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「旬、離して? 出掛けられないから」
奈津美は出来るだけ優しい声音で、旬に言った。
「やだ……ナツが行ってる間に俺が死んじゃったらどうすんの」
まだそんなことを言っている。
「だから大丈夫だってば。旬が大人しくしてたら死なないから」
奈津美はそう言って聞かせようとする。
旬は、風邪で高熱なんて初めてだから、色々不安に思っているのだろう。
「すぐ戻ってくるから。ね?」
奈津美はそっと旬の頬を撫でた。
「……うん」
渋々、といった感じではあったが、旬は手の力を緩めた。
「ホントに……ホントにすぐ帰ってきてな?」
旬は一生懸命に奈津美を見上げてそう訴える。
「うん。分かってるよ」
奈津美が頷くと、旬はほっとしたような表情になって、とろりと瞼が落ちていった。瞼が落ちると、すぐに寝息が聞こえた。
奈津美は外に出た旬の手を布団の中にしまい、頭を撫でた。
いつもこれぐらいならいいんだけど、と密かに思う。
でも、やっぱり朝っぱらから変な内容のメールを送ってきたり、襲ってきたり、死ぬんだと大騒ぎされるのも困る。
やっぱり風邪をひいても旬は旬だ。大して変わりはない。
とりあえず、買い物だ。冷蔵庫の中のものを確認して、あと、出かける前に氷でも当てておいてやった方がいいだろう。
そう思って冷蔵庫の中を見てみたら、ほとんど何も入ってなかった。
しかも、冷凍庫には氷もない。
やっぱり普段、旬一人では、食料品という食料品は買わないだろうし、三月というこの微妙な時期に氷だって作っておかないだろう。
奈津美は、製氷機に水を入れてセットして、とりあえず今はできるだけ冷たい水でタオルを冷やして旬の額においてから、買い物に出掛けた。