続・ダメ男依存症候群 ~二人で一つの愛のカタチ~
「旬、ごはんは?」
「食ってきたよ。ナツも食ってきてるだろうと思って」
「そう」
奈津美はリビングに入り、引き出物の入った紙袋をローテーブルの横に置いた。
「でもいいなぁ。結婚式って。美味いもん食えるし」
旬はベッドに座りながら言う。
「別にそのために行ったんじゃないってば。確かに料理は美味しかったけど」
奈津美は笑いながらアクセサリーを外していく。
「いいなぁ……あ、ナツ。これ何?」
旬が紙袋に気付いてベッドから下りる。
鋭い。鼻でもきいたのかと奈津美は思う。
「引き出物よ。確かお菓子だったかな」
「え? お菓子?」
旬の顔がぱあっと明るくなる。予想通りだ。
「開けてもいいよ」
「うん!」
旬はまるで子供のように、嬉しそうな顔をして袋から箱を出し、その包装紙を外していく。
「おおー! 美味しそー!」
箱を開けて、旬は目を輝かせる。
引き出物の中身は、クッキーとマドレーヌのセットだった。
「本当だ。美味しそう」
奈津美も座って箱を覗き込む。
「ナツ……」
旬は、じっと奈津美を見つめる。
「……いいよ、食べても」
「やった! いただきまーす」
旬はマドレーヌの方に手を伸ばした。
まるで待てをさせられていた犬のようだ。奈津美は旬を見ながら笑った。
そして、奈津美はクッキーの方に手を伸ばす。
「ヒデキ……エリ……」
旬が袋から出したマドレーヌを見て呟いた。
「ナツ、今日結婚した人って、ヒデキさんとエリさん?」
確認するように旬が言った。
「うん。そう……何で分かったの?」
「ほら。ここにかいてる」
旬がマドレーヌの表面を奈津美に見せる。
そこには、ローマ字で新郎新婦の名前と、今日の日付が焼印されていた。