返シテクダサイ《都市伝説》
二階は病室、三階も病室、四階はなく、五階は手術室などがあった。
どこもそう大差なく荒れ狂い、埃が積もり、放置されているその年月の長さを思い知る事になった。
手術室などはメスなどの医療器具も床に投げ出され、埃を被っていた。
たまに石を踏み割りながらその荒れた病院内を歩き回り、俺達の冒険はとりあえずのところ幕を下ろした。
「あの四階気になるなぁ…」
言いながら、晴彦は嘆く。
病院の一階へと戻ってきた俺たちは各々に感想を述べ合っていた。
四階は壁があるだけで、ドアなどは何もなかったのだ。
最初は裏口側の階段をのぼり、下りるときは入り口側の階段を使って、両方の階段を使うことで、変化に気付こうとしたのだが、四階だけはどちらも壁だった。
「でもよ、結局一周したけど何もなかったよな」
「そうだな」
「あ、そういえば野々村さんとの約束はどうするの?」
晴彦の言葉に、あ、と思い出したように羽山が声を上げる。
羽山は病院の正面玄関のあちこちを歩き回って、良さそうなものを物色し始めた。
石などを持って帰ったとしてもそれは肝試しに行ってきたとは言えないからだ。
辺りを探すと今で言うナースステーションがあり、そこに古びた大量の資料がそのままに残されていた。
机の上に投げ出されたように置かれたそれの埃を払い、見てみるとカルテのようで、初めて見る名前の人間の住所や体重などが書き込まれている。
「よし、これにしよう」
「カルテかぁ…」
「もういくぞ」
時刻は十二時を回る少し前。
早くしなければ終電が終わってしまう。
俺たちは時計を確認すると大急ぎで裏口へと向かって外へと出て行った。
「お邪魔しましたー!」
羽山の声が静かな病院内に響く。
閉めた覚えのない門の前へ向かうと、また歪な音を立てながら門を開いて外へ出、俺たちは暗がりの歩道を歩き始めた。