返シテクダサイ《都市伝説》
晴彦が改めて今巡ってきた病院を外からカメラを回して眺めていた。
ズームにして、四階の付近を撮影する。
元々病院に四階があるのは少ない。四と言う数字はあまり好まれる数字ではないからだ。特に命に関わる現場としては。
「あれ、…四階に窓がある」
窓の数を縦に下から数え、高さ的な事も考慮しながら、晴彦は窓を数えた。
「あ、やっぱり四階だよ、あの窓」
指をさしてその窓を教える。
そこには高さが10~15cmほど、横は1mほどしかない隙間のような窓が、確かにそこに不自然な形で存在していた。
入り口のない、窓のある階。
あれが本当に四階にある窓だったら、そこにある意味が不可解だ。
「…入る場所がないのに窓?」
「都市伝説にさ、あったよね。あともう一部屋あるはずなのに、壁になってて、その壁紙を剥がすと部屋が現れて、中にはクレヨンで『ごめんなさい』とか『あけて』って書かれてるって言うヤツ」
「ああああああああやめろー!!」
とうとう耐え切れなくなったのか、羽山が叫び声を上げた。
静かな歩道、家も殆ど無い木々に覆われた道のど真ん中で叫ばれた声は、草むらに隠れていたのだろう猫を追い払うだけの効果はあった。
「そ、そんな大声出さなくてもいいじゃん!」
「お前の叫び声はいちいちうるさいんだよ」
「お前らなぁ…早く帰るぞ!!」
物言いたげに俺たちを睨みながら羽山はさっさと駅へと向かっていった。
俺たちは溜息を漏らしてお互いを見やり方をすくめると、しょうがないなと羽山の背中を追いかける。
カメラはそこで撮影を終了した。