返シテクダサイ《都市伝説》
「ちょ、これ…やばいんじゃない…?」
「鏡、…写ってるよな……サチコちゃん…」
「どうする?止めるか?」
「僕はまだ大丈夫だけど…」
俺も、映像を見ている分ではまだ平気だ。実際に何かポルターガイスト現象が起きているわけではない限り、俺はこのまま見続ける気で居た。
何かが起きればコードを引き抜いてしまえばいいのだと、思っていたのだ。
羽山も二人がその意見ならと、然して反対はせずに、ただテレビ画面から離れて俺の傍によってきた。
案外小心者だ。
映像は病室の中になっており、格子を映している。
『病院って普通格子あったっけ?』
【閉鎖病棟では、当たり前ですよ】
『ねぇよ、普通』
『え、じゃあなんで付いてんだよ?』
【脱走しない為と、】
『………』
【自殺防止、ですね】
『晴彦のおばあさんの話、近いのかもな』
『え、マジかよ…』
『…行くぞ』
そう言って、今度は俺の背中がテレビ画面に移る。
その隣で、脚がぶら下がっていた。隣と言っても、もう殆ど脚が肩に当たってもいいほどの近さだ。
まるで、首吊り死体のように、脚だけが画面の左上からぶら下がっていた。
勿論そんなものがあったら俺は絶対に気付くし、他の二人だって見つけていたらわざわざこの病室に入ることはない。
あの時は見えなかったものが全て、この映像には記されているのだ。
他の病室も一つ一つに、映り込んでいた。
包帯で身体をぐるぐるに巻いた、男かも女かも付かない人のようなものが、包帯の隙間からジッと此方を観ていたり、ナイフを持って此方を睨みつけていたり、ベッドの上で動かなくなっていたり、怯えていたり、笑っていたり。
その映像は、おぞましいの一言でしかなかった。