返シテクダサイ《都市伝説》
そして、四階に行ったとき、そのおぞましい声は生々しくスピーカーから蠢きあって吐き出された。
「うぉお」や「ぅああ」やら、「助けて」「開けて」「誰か」「人殺し」「裏切り者」「出して」。
そんな声が一緒くたになって、壁の奥から恐ろしいほどの迫力で響いてきたのだ。
誰もその声に反応することはなく、四階が壁になっている事を全員が首を傾げている。
ここには何もないんだね、なんていうのんきな声が蠢く声の中から微かに耳に届いた。
「もしかして、四階って…末期患者を閉じ込める部屋だったんじゃ…」
「でも四階に入り口はなかったはずだぜ!?」
「もしかしたらもう一つ、どこか入れる場所があったのかもしれない」
四階を通り過ぎると、その蠢く声は聞こえなくなり、手術室。
そこでは荒れた手術台などを眺めている俺たちと、メスやハサミなどがばら撒かれ、積もった埃の中に埋まっている映像が映し出されている。
ここでは何の以上も無いようで、ホッと胸を撫で下ろしかけたとき。
『パキッ』
【…痛い】
男の声が、うめくように言った。
あの割れるような、砕ける音には身に覚えがある。
俺が石を踏み砕いた、あの音だ。