Secret love 【改訂版】

「ああ、えっと? え? ありがとう?」

 まだ寝ぼけているのか、それとも私がこんなにも話しているのが珍しいのか、副社長は驚いたようにストールと私を交互に見た。
「それと、これを召し上がってください。お好みは解りませんでしたが」
 
そう言って副社長の前に、コーヒーとサンドイッチを置く。
今度は確かに私の態度に驚いたのがわかった。
何の言葉も無く私を見る副社長に、なぜか居心地が悪くなり私は踵を返す。
自分のデスクに戻るためにドアに手をかけて、動きを止めた。

「朝の社長との打ち合わせは変更できなかったので、それが終わり次第ご自宅へ戻って着替えてください。その時間は取ってあります」

顔を見ずに副社長に言うと、今度は後ろからいつもの作ったような声ではなく、やわらかい声で「水川さん。ありがとう」そう聞こえた。
 
私だっていくら苦手なタイプとはいえ、鬼じゃないんだから。
そんな言い訳をした自分に驚きため息を付くと、私は仕事を再開した。

「副社長、失礼します。今日はきちんとご自宅でお休みください」
 
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