Secret love 【改訂版】


「ごめんなさい」
それと同時に、少し焦ったような女の声が聞こえた。

またナンパか? そんな思いで振り返ると、弘樹が椅子に掛けてあったジャケットが下に落ちたことがわかる。
そして、それを落としたのであろう女の子がしゃがみこんでいた。

「ごめんなさい」
もう一度謝罪しながら弘樹にジャケットを渡すその子は、とても綺麗な子だった。長身で細身。長いストレートの真っ黒の髪が印象的だった。

「いや」
愛想もなくそれを受け取った弘樹に、相変わらずだな、そう思いながらもその子に視線を送る。
次の言葉は一緒に飲みませんか? そんなところだろう。そう思っていた俺だったが、そんな妄想はすぐに吹き飛んだ。

あっさりと俺たちに小さく会釈をすると、その子は歩いて行ってしまった。
「ナンパだと思ったな」
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