Secret love 【改訂版】
「誠、今特定の彼女は?」
クスリと笑いながら言った俺に、弘樹はまだジャケットを持ったまま後ろを見ていた。
「なんだよ。どうした? 俺にそんな女いないこと知ってるだろ?」
俺の言葉に弘樹はこちらを見ると、真面目な瞳を俺に向ける。
そんな弘樹に、俺もグラスをテーブルに置くと、マジマジと弘樹を見る。
「だよな。じゃあ、今の子に声を掛けに行かないか?」
「弘樹……。珍しいな」
今まで何度となく女の子から声を掛けられても、一度も誘いにのったことのない弘樹に俺は驚いていた。だからこそよっぽどのことだろう。
「付き合うよ」
眠気は多少あるものの、俺はグラスを手にすると立ち上がった。