Secret love 【改訂版】
少し店の中を探すと、さっきの子はすぐにわかった。
店の隅の二人掛けの席に座り、一人でグラスを持つ姿はとても綺麗だった。
「一人で来てると思うか?」
弘樹もすぐに見つけたようで、俺に尋ねる。
「いや、そんな感じにも見えなかったけど」
「だよな」
そう言いながらも、弘樹は珍しく自らさっきの子の方へと向かって歩き出した。
視線に気づいたのか、さっきの子がゆっくりと俺たちの方を見た。
「一人?」
初めて聞く人から見れば、声を掛けるようなテンションには見えないだろうが、少し楽し気に聞こえた弘樹の声に、俺は本当に驚いていた。
「友達と」
少し警戒したような声音でそれだけを言うと、その子は視線をグラスに向けた。
「一緒に飲まない?」
ナンパにも慣れているのかもしれない。決して友好的には見えないその態度にも、弘樹は続けて声を掛けた。
「無理です。友達も一緒だから」
「その友達も一緒に。俺も一人じゃないから」
その言葉に、その子が俺にチラリと視線を向ける。