Secret love 【改訂版】
呟かれるように零れ落ちた言葉と同時に、その子はクルリと踵を返すと走り出した。
「莉乃!」
驚いたように初めにいた香織という子が声を上げる。
なんだこれ? 副社長って呼んだ?
俺は頭の中で、さっきの子を思い出そうとする。そして不意にその呼ばれた名前にハッとする。
「彼女、水川莉乃?」
俺の問いに驚いたように香織ちゃんが躊躇しつつ小さく頷くのを見て、俺は走り出した。
目立つ彼女は店内が混みあっていたこともあり、すぐに追いついた。
「待て」
どうして追いかけたかもわからなかったが、俺はなぜか彼女をトイレに向かう通路へと連れて行くとジッと彼女を見た。
「水川莉乃?」
俺から視線を外し、気まずそうにする彼女に俺は確信した。
「へえ、意外。本当は遊んでましたとかそう言う感じ?」
俺のその言葉に、いつもの彼女からは想像できない表情で言葉が返ってきた。