Secret love 【改訂版】
「そんなこと関係ありませんよね? 今はプライベートですし」
キッと睨みつけられて、俺はなぜか少し楽しくなった。
「ふーん。こっちが本当のお前か」
にやりと笑った俺に、水川さんは驚いたような表情を浮かべた。
「副社長こそ別人ですね。やっぱりあの会社の嘘くさい笑顔は作り物だったんですね」
最後は呟くように言ったその言葉に、いつもの会社での演技が見破られていたことに驚いた。
「だったら何? お互いの本性バレたな」
そういうと、俺は水川さんを壁へと囲い込むと、上から見下ろす。
さっきも引き込まれたぱっちりとした二重のダークブランの瞳。ふっくらとしたつややかな唇。誰が見ても可愛い、美人そんな部類だろう。
現にさっきも俺達以外の男がチラチラと二人を見ていた。
下ろされた髪から少しだけ見える首筋、ゆったりとしているが、女性らしい黒の長めのニットに、細身のパンツ。いつもより高いヒールなのだろう。目線は少し高いが、すっぽりと俺の中に納まる彼女はやっぱり別人のようで。
「いい加減にして! 私をあなたの遊んでいる様な女と一緒にしないで!」
その意外な言葉と、はっきりと拒絶されたことに俺は驚いた。
俺の周りには副社長と知ると態度を変えるような女ばかりだった。
今日の会社でのこと、そして今の彼女。
俺が興味を持つのには十分だった。