Secret love 【改訂版】
「そんな事を言ってますけど、本当は限界ですよね」
それにすら返事をせず、誠は顔を手で覆う。
「家はどこですか?」
その問いに誠はすぐそばに見える、タワーマンションを指さす。
「え? あそこ?」
「悪い、莉乃送れない」
「送れないじゃなくて、帰れないでしょ?」
今にも座り込みそうな誠を放置することもできず、私はそう呟くと誠の腕を取り歩き出した。
かなり危ない足取りの誠を連れて、なんとかマンションの前までくるも、かなり高級そうなマンションに私は立ち止まる。
セキュリティも完璧だろうそのマンションを私は見上げた。
「長谷川様!」
かなり立派なエントランスから聞こえたその声に、私は視線を向けた。
「お手伝いします」
三十代後半ぐらいのスーツ姿の男性が現れ、誠の腕を自分の肩に回す。
一気に軽くなり私はホッと胸をなで下ろした。
「三ツ谷さん、申し訳ない」
「いえ、珍しいですね」
顔を覆いながら言った誠に、三ツ谷さんと呼ばれたその男性は微笑むと私を見た。
「このマンションのコンシェルジュの三ツ谷です」