Secret love 【改訂版】
「秘書の水川です」
咄嗟にいつもの挨拶をしてしまい、チラリと誠を見た。
特に何も言わない誠に、ここで失礼ようと声を掛ける。
「それでは副社長、三ツ谷さんにお願いをして帰らせて頂きますね」
これ以上、この人と関わりたくなくて言った私だったが、それは呆気なく阻止される。
「こんな上司を置いていくのか?」
こんなときだけ上司ずらしないでほしい。
どうしてこんなことを言っているのだろう?
全く意味が解らず、困惑と多少の苛立ちを込めて副社長を睨みつけるも、かなり眠そうな瞳がそこにはあるだけだった。
「水川様、どうぞこちらです」
三ツ谷さんにそう言われてしまい、私は渋々二人の後を追った。
誠の部屋はこのマンションでも最上階で、かなり高級感が漂う造りだった。
エレベータを降りると、落ち着いたホテルのようで扉は一つしかなかった。
「ここです」
三ツ谷さんが慣れた手つきで鍵を開けると、誠に声を掛ける。
「長谷川様、私はこちらで」
「ああ、ありがとうございます」
誠は壁に手をついてそう答えると、玄関へと足を踏み入れた。