Secret love 【改訂版】

「では私もここで」
そう言いかけたところで、玄関の段差に躓く誠が目に入る。
「あぶない!」
そう叫んで手を出すも、私が誠を支えられるわけもなく、呆気なく二人で倒れ込んだ。
あれ? 多少の衝撃がありそうなものだが、特にどこもいたくなくて、起き上がろうとすると、下から声が聞こえた。

「痛っ……」
支えようとしていた私が、守られるように誠を下敷きにして抱きしめられていることに気づき、私はあたふたと起き上がろうとジタバタした。

そのことが余計に誠を抑え込むような形になってしまい、下からうめき声が聞こえる。
「莉乃、落ち着け。眠気も冷めた」
小さく息を吐きだしながら、誠は自分の目を腕で覆う。
「本当にごめんなさい」
動きを止めて大人しくするしかなく、私は誠の腕のなかそう呟くと同時に、抱き起られる。
「いや、俺こそ悪い。やっぱり徹夜明けで飲むものじゃないな」

かなり広い玄関に座り込んだままの私と誠。
この訳の分からない状況にいたたまれなくて、私はカバンを拾うと立ち上がる。
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