Secret love 【改訂版】
そしてそれを存分に活かして、本気なのか遊びなのかは知らないが、数多くの女性と噂になっている。
そんな副社長の毒牙にかからないためと、父親である社長が私を任命したと聞いた時は、そんな理由かと呆然としたのを覚えている。
しかし、私のような秘書の方が周りの女性社員からも反感を買わないし、副社長はいつも笑顔で何も言わない。とても仕事はしやすい環境にあるため、二年たった今はそれなりに居心地も良くなっている。
「水川さん!」
そんなことを考えながらぼんやりしていた私は、呼ばれた副社長の声にはっと意識を戻した。
「大丈夫? あとこの資料も頼めるかな?」
柔らかな声で言われ、私は小さく頷く。
「今から社長と打ち合わせだから、戻るまでにできるかな?」
伺うように尋ねられ、私はその資料の中身を確認すると、「大丈夫です」と副社長を真顔で見た。
「よろしく頼むよ」
本当にそう思ってる?
そう言いたくなるほど、怪しいまでにも満面の笑顔の副社長の後姿を見送った。
こんなに愛想がない秘書でいいのだろうか?
そう思ったことも過去はあったが、真面目な私だからこそ秘書にしたと言われれば、必要以上に話をする必要もないし、言われたことだけをやっていることが正しいような気がして今に至る。