Secret love 【改訂版】
給湯室へと向かい、コーヒーを落としていると後ろから声が聞こえた。

「副社長のコーヒーよね?」

後ろを振り向くと手には湯呑の乗ったお盆を持った、先輩の夏川さんが立っていた。

「はい」
小さく頷いた私の横をすり抜けると、シンクへと湯のみを置きながら、夏川さんは私を見た。

「どうしてあなたなのよ」
その言葉にどう答えることもできない。
 
経験はもちろん、容姿においてもすべてが私より上だろう夏川さんは、ずっと副社長秘書を狙っていたと噂で聞いた。
 
しかし、それが副社長秘書になれなかった理由だとは本人は思っていないと思う。
無言でコーヒーを入れていると、ため息とともに給湯室から夏川さんが出て行ったのがわかりホッと息を吐く。

「どうしてあんな軽薄な人がいいのよ……」
つい零れ落ちた言葉に、私は慌てて周りを見渡した。そして誰もいない事に安堵した。
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