Secret love 【改訂版】
コーヒーを持って副社長室へと戻ると、真剣な表情で机に向かう姿があった。
「ここに置きます」
少し大きな声で言うも返事はなく、私はデスクの一番端へとカップを置く。
「副社長!」
もう一度呼びかけると、パッと副社長の真面目な瞳とぶつかる。
「ああ、悪い。ありがとう」
そう言って小さく息を吐くと、コーヒーを確認したようだった。プライベートは最低なこの人も、仕事になると人が変わったように真面目だ。
集中しだすといつもこうして周りの声も聞こえなくなる。何度コーヒーをこぼしたか数えられない。
そんなわけで、かならずこうして副社長が認識するまで私は声を掛けるようになった。
「失礼します」
私のその言葉もすでに副社長は届いておらず、真剣な面持ちでパソコンの画面を見つめていた。
この二面性はどうなっているの?
そんなことを思わないこともないが、私としてはどうでもいいことだ。
副社長がどこで誰と何をしようが、どれだけプライベートが派手だろうが、私のことをそっとしておいてくれればそれでいい。
そんなことを思いながら、私は自分のデスクへと戻った。