僕だけにナデナデさせて アミュ恋 3曲目

「俺さ、
 笑顔を貼り付けてる春の顔を見るの
 けっこう辛いんだけど」



 俺の言葉に
 何かを思い出したかのように
 少しだけ笑みを浮かべた春輝。



「マー君は耐えてくれてるよ」


「は?」


「あやあやは、マー君から聞いてない?
 二人だけの時は
 マー君の前で笑わないから。僕」


 
 『マー君』というのは、
 アミュレットのメンバー
 『マトイ』のこと。



 春輝の部屋に居候中で。

 相手の顔色なんて気にせず
 思ったことはガツンと口にする
 魔王みたいな奴。


 
 俺もマトイから聞いていた。


 嫌なことがあっても、辛いことがあっても。
 笑顔を絶やさない春輝だけど。

 マトイの前だけでは
 辛いときにムリして笑わないどころか
 普段から1ミリも笑わないらしい。



 マトイから聞いた時には、
 信じられなかったけど。

 俺の目の前で、
 苦しそうに瞳を揺らす春輝を見たら
 もう、疑う余地すら残っていない。


 
 遠い目をしていた春輝が
 視線を落としながら、言葉を続けた。
< 15 / 375 >

この作品をシェア

pagetop