あなたの残したタカラモノ〜一粒の雫〜
ピリリリリ……
ベッドの上に放置してあったケータイが着信を告げる。
俺はケータイを手にとり、テレビの電源をつけた。───お天気予報のお姉さんが画面に映る。
「なに…?」
『蓮?今日の午後、ヒマ?私仕事休みだから…』
──いつものように、女から。
「いいよ。どこで会う?」
『じゃあ〜、〇〇ホテルがいい』
──彼女でも、友達でもない。
「わかった。3時頃、行くわ」
ケータイを閉じ、ぼーっとしながらテレビの天気予報に目を向ける。
《…週末まで晴れる日が続くでしょう……》
───ただの"セフレ"。
後腐れなく、気軽にヤレる、そんな存在。
だって俺、男だし。ヤるのは気持ちいいし。何回ヤッたって減るもんじゃないし。
彼女だの彼氏だの、そんなの重すぎる。
なにより…めんどくさい。
こんな腐りきった世の中に、『永遠』なんて言葉、誰が信じるだろうか?
いくらお互いが愛しあっても結局はすれ違って、衝突して、裏切って裏切られて……
あんな思いするくらいなら……
今のままで……
『───もうレンと居るのが辛いよ……。弱い女でごめんね──…‥』
蓮は何かを思い出したくないかのように、辛い表情で顔を覆った。
テレビでは太った男が地域料理なんかをリポートしている。
しばらくテレビの音と、外の道路を行き交う車の喧騒が、部屋の中に響いていた…。