加藤君に話がある高城さん
10

修学旅行の日程が出たりして、高2はなんとなく浮かれた雰囲気がしていた。
そして、なぜか、やたらと加藤くんを訪ねてくる女子が増えた。

《修学旅行で一緒に回りたいんですけど》とか、《市街回る時合流しません?》とか。

移動など事あるごとに点呼もかねて班になるように、と決まっているが、つまりは自由行動だと皆考えているようだった。
これを機に告白して彼氏を作って旅行も楽しむ。女子は力を入れているし、男子もソワソワしている。
加藤くんは高2の初め頃まではカノジョがいたらしい。でも4月ごろ別れてからはずっと特定の子がいない。現在もいないということで、今がチャンスだという事らしらしい。
ルミも、ちらっと私を見て、

「大人しくて、文句言わない子と組んでるから、好きにできるじゃん!」

と言い出した。

ルミもしつこいけれど、他の女の子たちだってルミに止められたって、言いに来る。数日で何人に告白されたんだろう。その度に、ドキッとする。
《こっちと回るわー》って言われるんじゃないかと思ってしまう。
かわいい子だっている。加藤くんと話が弾む子だっている。明るくて魅力的な子もいる。
《すっごい水着見たくない?》って言った子もいる。
そして私は、文句を言わない大人しい子、カノジョでも何でもなくて好き勝手できる子、そんな評価されたらしい。
《加藤くんはだめ!私とまわるんだから!》って頑張ったらどうなるのかな、なんて考えたけど、違う、周りの女の子達にどう思われるかじゃなくて、加藤くん本人がどう思うかだよ。

加藤くんが呼び出されたら、上地くんも立ち上がって横にならぶ。

「俺ら一緒にまわるから無理だね。ごめんね」

と断る。

だけど、女子からしたら《悠太もいるならさらにいいじゃん》ってめげない。
加藤くんと上地くんは、愛想良く、でも結局かなりはっきりと断っていた。

嬉しかった。

加藤くんが好きだと思うその先⋯⋯ 。

私は班が同じだけじゃない。欲張りになっていて、加藤くんは私と一緒にいるんだ、って堂々と言えたらいいのに、って考えてる。
でもそれって、付き合いたいって事なんだと思う。
彼に特別に思われて、そしてその先、ずっと一緒にいたい。

わたし、加藤くんが好きだしカノジョになりたいんだ⋯⋯ 。

他の子だってみんなそう思って加藤くに話をしてるんだ。

わたしは?
加藤くんに私の事も気持ちもちゃんと伝えていない。
怖い。
ごめんね、って言われたら、全部が消えてしまうんだろう。彼と話す時間も、目が合う瞬間も、そしてもしかしてって思う心の中の期待も。

確かめたい、進みたい、はっきりカノジョになりたい。
でも、無くすのが怖い。

そして私は彼に言わなければならない。
誰にも言ってない事。
私の秘密を。
< 10 / 14 >

この作品をシェア

pagetop