加藤君に話がある高城さん
3

あの日グラウンドで初めて話しかけられた。
それまで加藤くんは《名前ぐらいは認識してるクラスが一緒の人》だった。
同じクラスでも特になんの接点もなく、これからもそうなんだろうと思っていた。
私は怪我のこともあって、人とすぐには仲良くならない。今年は親友の相川真名と一緒だから2人で静かに過ごしている。

加藤くんはいつも派手目の人達に囲まれていて、男女合わせてわっと多めの人数でクラスの中心にいる。
長めの髪に、さりげないピアス。
目がすっと切れ長で視線が鋭い。整った目鼻立ちに、薄めの唇、口数はすくないけど、思った事は相手に構わずはっきりズバッと言う。
クールな雰囲気なのに、男女問わず割と親しげに慣れたかんじ接するので、すごく女子にモテている。
大抵は机に軽く腰掛けて友達の話を聞きながら、少し俯いて笑っていた。髪が前に垂れて形の良い耳と光るピアスが見える。

何となく目で追っていたら彼が顔を上げて、こちらをすっと見た。

目があった。

ドキッとしてあわててそらした。じろじろ見てたから何かなと思ったのかも⋯⋯ それ以上顔があげれなかった。

教室で目が合う、そんな事が何回かあった。それだけだった。

だから最初に荷物を手伝ってくれた日に初めて2人で話をして、なのに何だか普通に会話をして、真名以外だれも知らない私の怪我まで話して、私は本当に現実だったのかな、と思うぐらいだった。
でも加藤くんが何度も助けてくれて、彼の存在がいつの間にか《真名の次によく話す人》になっていた。
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