ボーダーライン。Neo【中】
「そこで果たして、檜くんは進んで結婚しようってなるかなぁ? 相手高校生だよ?
それが卒業後でもアーティストを目指す十八歳の少年。金銭の状況で言ってもかなり厳しいよ?」
「それは……分かってるよ。だからあたしだってギリギリまで働くし。
教員には産休も育休もある。それに今まで貯めてきた貯金だって。
……それに」
「それに?」
途中で言い淀むあたしの瞳を、美波はジッと覗き込んだ。
「……前に。妊娠したらどうする? って聞いた時。檜、結婚するって。……してくれるって言ったもん」
「アハっ!」
真剣なあたしに相反して、美波は手を叩いて笑い出した。
「アハハっ! やだ、サチ。まさかそんな言葉信じてんの??」
羞恥心からカッと赤面し、思わず口をつぐんだ。
「そりゃあ誰でもそう言うでしょー?
“妊娠しても結婚とか分からないから堕ろしてくれ”なんて。言える訳ないじゃん」
「檜はそんな事……っ」
「思って無くても、実際その局面に立ったら狼狽えるんだって。
八つも年下の、それも高校生に。サチは依存し過ぎ」