ボーダーライン。Neo【中】
「美波はっ。あたしの今の立場とか、気持ちが分からないからそう言うんじゃない。
檜が高校生だから、なんて。そんなの今までに何百回も何千回も考えたよ。
第一、檜があたしを想う気持ちなんて美波には」
「分かんないよ? あたしはあたしで、サチや檜くんじゃないもん。
そんな子供みたいな事いちいち言わないでよ」
言いながら美波は髪を掻き上げ、目を逸らした。
あたしはガラステーブルに置いた青いタンブラーを見て俯いた。
「とにかく。そうやって妊娠を企んで、裏で画策するのは汚いよ?
事前に結婚の約束までさせて、檜くんが可哀想」
「可哀想、なんて。そんな言い方……っ」
「キツいかもしれないけど。今後何かあって責められるのはサチなんだよ?
自分の親に言えないんだから、どうせ相手の親にも言ってないんでしょ?」
あたしは仕方なく頷いた。
「サチはさ。単に結婚っていう“契約”であの子を縛りたいだけなんだよ。
その為に妊娠したいだなんて。子供は結婚する為の道具じゃ無いんだよ?」
その通りだと思った。
美波の言う事は正論で、多数派の意見だ。
分かっていながら、あたしは檜を追い詰める材料を躍起になって作っていた。