ボーダーライン。Neo【中】

「美波はっ。あたしの今の立場とか、気持ちが分からないからそう言うんじゃない。
 檜が高校生だから、なんて。そんなの今までに何百回も何千回も考えたよ。
 第一、檜があたしを想う気持ちなんて美波には」

「分かんないよ? あたしはあたしで、サチや檜くんじゃないもん。
 そんな子供みたいな事いちいち言わないでよ」

 言いながら美波は髪を掻き上げ、目を逸らした。

 あたしはガラステーブルに置いた青いタンブラーを見て俯いた。

「とにかく。そうやって妊娠を企んで、裏で画策するのは汚いよ?
 事前に結婚の約束までさせて、檜くんが可哀想」

「可哀想、なんて。そんな言い方……っ」

「キツいかもしれないけど。今後何かあって責められるのはサチなんだよ?
 自分の親に言えないんだから、どうせ相手の親にも言ってないんでしょ?」

 あたしは仕方なく頷いた。

「サチはさ。単に結婚っていう“契約”であの子を縛りたいだけなんだよ。
 その為に妊娠したいだなんて。子供は結婚する為の道具じゃ無いんだよ?」

 その通りだと思った。

 美波の言う事は正論で、多数派の意見だ。

 分かっていながら、あたしは檜を追い詰める材料を躍起になって作っていた。

< 114 / 284 >

この作品をシェア

pagetop