ボーダーライン。Neo【中】

 3

 学校祭が終わって一週間もしない内に、檜とカイくんは校内で一躍有名人となっていた。

 今までで言えば、同学年や一部の下級生しか二人の存在を知らなかったのではないだろうか。

 それがあのライブで、校内に芸能人の卵が居ると噂となって広まった。今、彼らに告白をする女子が後を絶たないらしい。

 予想通りだなぁ、とあたしは呆れて息をついた。

「……ねぇ、アレって噂の淫行きょ、」

「シッ! 聞こえるよっ」

 近くで指を差す女子生徒をついチラッと見てしまう。

 彼女たちはバツが悪そうに、あたしに背を向け走り去った。

 多分、一年生だ。

 あたしは物憂いため息を漏らした。

 今生徒達の間では、檜とカイくんに集まる人気の声と、あたしと檜に生じた卑猥な噂で持ちきりだった。

【三年の秋月檜と英語教師の桜庭が空き教室で抱き合っていた】

 この噂に勝手な解釈を足した尾ひれが付き、【キスしてた】【ヤってた】【男と見れば桜庭は見境ない】など。

 あたしはしばしばそんな中傷を耳にした。

 噂を広める生徒から知った事だが、その発端はどうやら一年生の女子生徒らしい。

 参ったなぁ、と一気に脱力感に見舞われる。

 心当たりがあるだけに、単なる噂ですと言いきる自信がない。
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