ボーダーライン。Neo【中】

 学校祭の初日。あたしは圭介に彼氏のフリをさせ、空き教室で檜と抱き合っていた。

 噂通りの行動を悪評として流されている訳だが、恐らくは発端の一年生に見られていたのだ。

 あの学校祭ライブで檜が有名になった事が噂の増長を手助けした。



「……淫行教師」

 職員室へ向かう途中、すれ違いざまにそんな悪口が飛んでくる。

 無言で俯くあたしの隣りで、斉藤先生は声を張り上げた。

「こらぁっ!! あなた達、待ちなさい!」

 髪の長いふたりの女子生徒は「やばっ」と慌て、そそくさと走り去ってしまう。

「……たく!」

 斉藤先生は腰に手を当て、あからさまに顔をしかめた。

「今の二年生ですね。桜庭先生、あんなの気にしちゃ駄目よ?」

「……はい」

 あたしは苦い顔で頷いた。

「困ったものですねぇ、秋ヒノも」

「え?」

 斉藤先生は残念だと言わんばかりに嘆息した。

「何故かカイくんと違って、悪目立ちするんですよね。あの子だけ」

「そう、なんですか」

 言いながら、分かる気がする、とあたしは息を吐いた。

 恐らくは檜の存在に嫉妬する生徒が多いのだろう。

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