ボーダーライン。Neo【中】

 冷静なカイくんと違って、檜はやや無鉄砲で、後先考えずに行動する所がある。

 あの容姿(みため)と陽気な明るさから、誰からも好かれる存在でありながら、妬み(そね)みも買ってしまう。

「入学当初、ふたり共日本人離れした容姿だ、って。凄い注目されてたんですけどね。
 水城奈々さんとの噂で悪評が付いたのは秋ヒノだけなんですよ。
 カイくんの方は全くそんな事無いのに」

「そうですか」

 ガラガラと扉を引き、職員室へと足を踏み入れる。

 それにしても、と眉を寄せ、斉藤先生はデスクについた。

「桜庭先生にもちゃんとした彼氏さんがいるのに。何で秋ヒノと噂になっちゃうんだろう?」

 あたしも向かいのデスクに腰を下ろし、ええ、と睫毛を伏せた。

 険しい顔で机上に肘を付き、両手を絡めてしまう。

「火の無い所に煙は立たぬ、って言いますよね?」

「あ、田崎先生」

 斉藤先生と同時に、あたしも隣りの彼を見た。

「大体見当は付きますよ。秋月が一方的にちょっかい出してるんじゃないですか? ねぇ、桜庭先生??」

「え」

 突然同意を求められ、あたしは困った様に笑顔を固めた。
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