ボーダーライン。Neo【中】
「今日は良い知らせがある」
メンバーと共に、楽屋での待機中。
僕は水を飲む手を止め、顔を綻ばせる竹ちゃんを立った状態で見つめた。
僕と同様に、座ったままではあるが、陸、カイ、陽介もどこか緊張した面持ちで彼を見ていた。
竹ちゃんはみんなの視線を確認してから、話を切り出した。
「前々から言ってた、今週末にある彼らの来日公演の仕事なんだけど」
「取れたのか?」
急かして訊ねたのは陸だ。
僕は思わず、唾を飲み込んだ。
竹ちゃんは満面の笑みを絶やさず、人差し指と親指で丸印を作った。
「やった! やったーっ!!」
「よっしゃっ!!」
感極まる声で万歳やガッツポーズを作る陸と陽介の傍で、僕とカイも顔を見合わせて笑う。
今週末の土日、数年ぶりの来日を記念し、洋楽ロックバンドのホールライブが都内で予定されている。
僕たちが長年敬愛するロックバンド、‘Star Blacks’のライブだ。
ライブの前座として、初日は彼らの後輩バンドで枠は埋まっているが、二日目の日曜日、僕たちはオープニングアクトの枠を前々から志願していた。