ボーダーライン。Neo【中】
「……ごめんなさい。ここのところ、疲れてて」
「そっか」
疲れてるなんて、都合のいい言い訳に過ぎない。
本当は、結婚式が近づくにつれて檜の存在が日増しに大きくなっているのを感じていた。
彼との事はもう全部、綺麗さっぱり終わった事で、今更どうしようも無いのに。
あたしは、多分。
まだ未練を断ち切れずにいる。
もしも、結婚式など挙げずに独身のままで慎ちゃんと付き合っていくのなら、きっと時間をかけて昔の恋を思い出に変える事も出来るだろう。
それなのに、式までもう残り四週間を切ってしまった。結婚式の招待状だって既に送っている。
もうジタバタ出来ない。いい加減ちゃんとしないといけない。
あたしはキュッと口を引き結んだ。
「……ペーパーアイテムは。あともう少しで終わるから」
「え。ああ、うん」
空を見上げていた慎ちゃんが、慌てて返事をする。
そして、不意に眉を下げ、ごめんな? と謝った。
「なにが?」
当然、彼が謝る事に心当たりが無いので、あたしはキョトンとする、
「……いや。式の準備、全然手伝ったりしてないからさ。サチも疲れるよな?」
こういう所、なのだ。あたしが彼を好きなのは。