ボーダーライン。Neo【中】
そうなのだ。前に一緒に行けるか尋ねた時は、雑誌の校了が近いから無理だと断られていた。
あたしは、うん、と頷き、二の句を継いだ。
「何でも今書いてる記事に小さなカットを貰えたらしくてね? そこに檜たちのバンドの記事を書くんだって。
取材を兼ねてだから、プライベートって言うよりは、仕事として行けるみたい」
「え。俺全く聞いてないんだけど?」
「じゃあ後日知らされるんじゃない?」
首を傾げて笑い掛けると、彼は、そっか、と呟いた。
「……ねぇ、今度のライブでさ。前のあのバラードは歌うの? Flower、だっけ?」
「あ、うん」
「そっかぁ。楽しみだな」
あたしは俯きがちにはにかんだ。
檜が作詞作曲したあの歌について思い出す。
歌詞の内容は、彼があたしを想ってくれている気持ちそのもので、ロンドンで叶えた、あの密かなデートもサビの部分で歌われている。
「幸子ってさ。俺の音楽とか……そんなに興味無いと思ってた」
不意に檜が真顔でボソリと言った。
「え?」
ーー何で急にそんな事……。
あたしは目を瞬き、力無く眉を下げた。
「あ、いや。何となくなんだけど。
幸子からバンドとか俺の音楽の話、あんまり振られた事ないから」
ーー確かにそうだ。