ボーダーライン。Neo【中】
普段から気にはなっていても、きっと訊いた所で心からの共感は難しい、そう思って話題を振らずにいた。
でも、それは興味がないのとはまた意味が違う。好きな人の事は何でも知りたいと思う。
あたしは、ううん、と僅かに首を振った。
「興味無い訳じゃないよ? 実際、檜のライブにはずっと行きたかったんだし。
ただあたしは……檜が大事にしてるものに対して、分かったふりをするのが嫌なだけ」
檜は口を結び、あたしをジッと見つめていた。
「檜たちの作る音楽は純粋に好きだよ。だから頑張って欲しいし……応援もしてる」
そう言った後で、最後の言葉は本心では無かったかもしれないな、と気付く。
あたしは幾らか目を逸らした。
「あ、うん」と頷きながら、檜は若干照れていた。
檜が友達同士で作ったバンド、FAVORITEの歌は好きだ。一般的にも受ける音楽だと思うし、何より檜の声が耳に心地いい。
そう分かっているからこそ、頑張って欲しい気持ち反面、プロを目指さずに趣味で続けて欲しい気持ち反面、だった。
四日後のライブを思うと、きっと後者は有り得ない。
その道に通じた人に認められて、彼は別世界に足を踏み入れる、そんな予感すらしていた。