ボーダーライン。Neo【中】
社会のエンターテイナー達が檜の音楽を必要としているのなら、勿論反対なんか出来ない。
だからあたしは、足を引っ張るわけにいかない。
あたしは目を細め、「それに」と言葉をついだ。
「もう、打算的な考えは捨てるの。足手まといになりたくないから」
「え?」
当然、檜がそんな顔をするのは分かっていた。
ううん、こっちの話、と言って、笑って誤魔化した。
以前に諭された美波の説教が、ようやく理解出来たのだ。
どれだけ彼が欲しくても、檜の人生そのものの、邪魔は出来ない。
「何だよ、意味深だな~。幸子って出会った時からそうだよな」
「何が?」
「……ミステリアス」
ーーミステリアス??
あたしは目を丸くした。
「えぇ? そう?? 初めて言われたけど?」
檜は眉を下げ、はぁ、とため息をついた。
「それが計算じゃないからすげーよな」
ーー計算って。
「そんな器用に恋愛出来ないよ」
流石に可笑しくなって、あたしは笑い出した。
あたしなんて、ミステリアスのかけらも無い。言うならば、自分の本音を全て語れない臆病者だ。