ボーダーライン。Neo【中】
「あーっ、もう!」
急に手を引かれ、檜に抱き締められた。胸の奥がキュンと締め付けられ、心地いい痛みに目を閉じる。
「何なんだよ。俺絶対お前から離れらんねー、どんどん好きになってく。どうしてくれんだよ」
「ふふっ。何言ってるの? 離れちゃ駄目だよ?」
彼は返事をする代わりに、更に強く抱きしめた。
「ねぇ、檜」
「ん?」
「学校での噂が有るから、卒業までは外で会ったりしないで、距離を置いた付き合いをしていこう?」
「え」
檜の声に幾らか不安が入り混じる。
「あたしはそれで我慢するから。あなたが卒業したら……。
ここで一緒に暮らさない?」
そこで檜はあたしを解放し、少しだけ距離を取った。
「いいの?」
「もちろん」
今すぐの結婚は諦める。けれど、一緒には暮らしたい。これだけは譲れなかった。
檜の親にどう言えば良いのか。あたしが教師だから暫くは誤魔化さなければいけない、そう分かっていて同棲を申し出ていた。
檜は満面の笑みで喜んでいた。
彼の全てを独占したいあたしにとって、それが唯一の救いだった。