ボーダーライン。Neo【中】

 中へ入ると何処かで檜とすれ違うかもしれない。

 仕方なく、外で待とうと思った。

 あたしは鞄の中にいれた携帯を取り出し、彼にメールを打った。

【少し。会えないかな? 会いたいから、外で待ってるね。連絡してください】

 メールを送ってから、何処か近くの段差にでも座ろうかなと考え、暫くライブハウスの周辺をうろついた。

 入口からぐるりと回った場所に、地下へ続く階段が見えた。

 階段に差し掛かる手前に、丁度座れそうな出っ張りが有ったので、そこにちょこんと腰掛ける。

 程なくして、人の話し声が聞こえた。

 小さな悲鳴と共に、「大丈夫?」と語り掛ける声が聞こえ、あたしはピクリと反応した。試しに声のした方へ顔を向ける。

 今のは、檜の声だった。

 立ち上がって見下ろし、思わず口元を押さえた。

 ーーえ! 檜?? 何してるの?

 階段の下の方で、檜が誰か女の人の腰に手を当てていた。

 よくよく見てみると、女の人は美波で、二人の状況から美波が転びそうになったのを、檜が助けたのだと理解出来た。

 美波は恥ずかしそうに慌て、仕事で疲れていてボーッとしていたと言って取り繕っていた。
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