ボーダーライン。Neo【中】
「ごめんね。締め切り間際はあたしいつもこんなんで。
だから寝起きとか身の回りの事とか割と適当って言うか……。あ、でも不思議と体だけは丈夫なのよ?」
美波の様子を見て、檜がアハハと声を上げた。
「見た目通りのキャリアウーマン。そんな事言ってっけど、あんまり無茶するといつかは体こわすよ?」
「……そう、よね」
「美波さんって自分の事とかしっかりしてそうなイメージなのに、実は結構抜けてるんスね?」
そこで不意に、美波が黙り込んだ。
頬を染める親友の様子を見ていて、ザワザワと胸騒ぎがした。
まさか、と。
嫌な考えしか浮かばない。
「気付きたくなかったよ。そんな顔されたら……誰でも虜になる」
ーーやっぱり……。
予感は有難くも無く、的中した。くらりと急に足の力が抜けた。
ーー美波も、檜の事を?
そう思うと、ツンと鼻の奥が痛み、視界がぐにゃりと歪んだ。
天地がひっくり返るような、そんな絶望に打ちひしがれていた。
依然、口に手を当てたままでそこを動けずにいると、美波がそっと彼に抱き着いた。
いや。抱き着くというよりはくっついたと表現する方が正しいだろうが。
あたしはわなわなと唇を震わせ、名を呼んだ。
「み、なみ……?」
声に反応して、二人が階段上のあたしに気が付いた。
「え?」
呟きと同時に、檜とまともに目が合った。