ボーダーライン。Neo【中】
先ず最初に思ったのが、胸の詰まる気持ち悪さだ。
昼食時、お弁当の蓋を開けた時、その独特の匂いが鼻を突き、突如として迫り上がるものを感じた。
ーーう、気持ち悪い……っ。
しかめっ面で口元を押さえ、慌ててデスクを後にする。
職員用トイレへ駆け込むと、蛇口を回し、あたしは洗面台の淵に手をついた。
蛇口からほとばしる水音を余所に、ある可能性に思い当たる節は無かったか、懸命に頭を回転させる。
自覚は無かったものの、今考えるとそうなんじゃないか、と顔をしかめるばかりだ。
不安と辛さに顔を歪めるあたしが、鏡の中で涙を浮かべていた。
ここの所、厳しい残暑の影響と憂鬱で、幾度もため息を吐き出していた。
単なる夏ばてだと思い込んでいた。
どこを歩いていても外と中の気温差は激しい。だから内にこもった熱が体温調節にまごつき、体が熱っぽさを訴えても何ら不思議は無い、と。そう思っていた。
「桜庭先生、大丈夫ですか?」
手洗い場のドアが開き、心配そうな表情で斉藤先生が駆け寄った。
「……え、ええ」
若干残る気持ち悪さに顔をしかめつつも、蛇口の水をキュ、と止める。
斉藤先生に背中をさすられ、訊ねられた。
「……もしかして。赤ちゃん?」
「え」