ボーダーライン。Neo【中】
さっきまでの心当たりに正解を出された気がして、自分のお腹を見つめ、そして斉藤先生を視界に入れた。
彼女は眉を垂れ、やんわりと微笑む。
「つわりの症状、なんじゃない?」
あたしは無言で目を伏せた。
「……あたし妊娠、してるの?」
「まだ検査薬でしっかり調べた訳じゃ無いから断定は出来ないけど、多分ね。
生理は? ちゃんときてる??」
言われてハッと気が付いた。
「そう言えば、もう三週間も遅れてる」
ついひと月程前までの、妊娠したいという想いが強すぎて、以前から生理不順にはなりがちだったが。今回もそんな願望の余韻で、少し遅れているだけだと高を括っていた。
「どうしよう、あたし」
「お相手はあの彼氏さんでしょう? 学校祭の時私も見掛けたけど、誠実そうな人じゃない?」
斉藤先生の言葉を聞きながら、頬が堅く強張る。
「順序が逆になっても今じゃそう珍しい事でもないし。一度彼氏さんと話し合ってみたら?」
表情を固めたままで、ぎこちなく頷いた。
「妊娠が分かっても、うち産休も育休もしっかりしてるし。大丈夫よ?」
彼女は、心配事など何一つ無い、とあたしを元気づける笑みで励ましてくれた。
けれど、相手は圭介ではなく、檜だ。
まだ十八歳の彼に、何て言えば良いだろう、とその事ばかりに心を砕いた。